カバン
中学の自転車通学生には、なぜか通学カバンを荷台に括り付けなければならないというルールがあった。
漕ぎながら、ガタン!と段差を超える、耐えきれず荷物が落ちて、路肩に自転車を停めてくくり直す、だから「ああ遅刻ああ遅刻」の立ち漕ぎ祭り!、なんてよくあることだ。
校門の目の前にて最後の横断歩道を渡る。渡った先では生徒が左右から校門にどんどん吸い込まれている。
例のごとく今日もその流れに吸い込まれに、歩行者信号「青」の合図とともに自転車を漕ぎ出す。
ドスッ。という音。ん?と振り返ると、ああ私のカバンが道路の真ん中に落ちたことを認める。
直後。左折してきた車でカバンが見えなくなる。
『ズゾゾゾゾ、ズゾゾ!!!、、、ゾゾゾゾ、、ゾズゾ!!!ズゾゾ!』
なんていう聞こえてはいけない音が聞こえた。
唖然とする私。唖然とする生徒たち。一瞬、吸い込まれる学生の流れは止まった。みんな、道路の真ん中を見ている。
あられもない黒い通学カバン。少々伸びかけた荷台用のゴム紐が垂れ下がり、内臓が出ちゃってるように見える。
青信号が点滅し始めた。けど私はトボトボと歩いていって、かわいそうなカバンを前かごに載せる。
みんな私を見ていたが、私が校門に吸い込まれたら再び動き出した。いつも通りだ。
[1-6]の教室を開ける。朝部中だから2人しかいなかった。比較的よく話す男の子だった。1人は同じ美術部の子。もう1人は同じ小学校の子。
大けがして背負えなくなったカバンを抱えて教室に入った私は、2人を見てほろほろと泣き出した。
ほろほろほろほろ。ほろほろほろほろ。
私は第一声「なんか悔しい!」と笑い泣き顔で言った。悔しくて悔しくて、「悔しいよお」と言ってほろほろ泣いていた。
2人は静かに一部始終を聞いてくれた。
ほろほろほろほろ。ほろほろほろほろ……。
地域のかばん屋さんにカバンを修理に出した。嘘みたいなパッチワークにより縫いなおされ、カバンは返ってきた。消せないすり傷多数だった。
悔しくて朝8:00過ぎに男の子2人の前でほろほろと泣いた。原因を作ったあの車を見つけることは二度とできない。